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クリニック(診療所)開業時に知っておきたい療養担当規則

保険診療を行う医師であれば療養担当規則という言葉を聞いたことがあると思います。診療担当規則の基礎を知っておくことは、クリニック(診療所)開設後の個別指導監査といったトラブルを避けるために非常に有益です。

療養担当規則とは

療養担当規則とは厚生労働省令の「保険医療機関及び保険医療担当規則」の事で、保険医療機関と保険医が保険診療を行うにあたって守るべき基本事項を定めたものです。

療養担当規則の第1章では「保険医療機関の療養担当者」として療養の給付の担当範囲や担当方針などを、第2章では「保険医の診療方針等」として診療の一般的・具体的方針、診療録の記載を定めています。

療養担当規則と取消

健康保険法第80条および第81条には療養担当規則に違反した場合、厚生労働大臣は保険医療機関の指定取り消しや保険医としての登録取り消しをする事ができると定めています。

そのため、現在クリニックや医院を開業している先生や将来開業を検討している先生は療養担当規則について最低限内容を把握しておく必要があります。

監査や個別指導を避けるために知りたい診療担当規則

ここでは診療所(クリニック)や医師の先生が注意した方が良い診療担当規則について一部を紹介していきたいと思います。

第2条 患者紹介の禁止について

療養担当規則第2条の4の2には「保険医療機関は、患者に対して、第五条の規定により受領する費用の額に応じて当該保険医療機関が行う収益業務に係る物品の対価の額の値引きをすることその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益の提供により、当該患者が自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない」と定められています。

そのため、患者獲得を目的として患者紹介ビジネスに紹介料を払う事は許されません。また、直接紹介料を支払わなかったとしても、賃借料や委託料などの金額が不当に高額(低額)で実質的に患者紹介の対価が上乗せされている場合も問題となります。

第2条 特定保険薬局への誘導の禁止について

療養担当規則2条の5は特定の保険薬局への誘導を禁止しています。そのため、医師が直接特定の保険薬局を指示することはもちろん、患者のサービス目的であるとしても、特定の保険薬局のみを記載した地図の配布や特定の保険薬局を記載した案内図の掲示は許されませんので注意が必要です。

第5条 窓口減免の禁止について

負担を求める事ができるもの

  • 患者一部負担金
  • 入院時食事療養費・入院時生活療養費の標準負担額
  • 保険外併用療養費における自費負担額
  • 人工腎臓を実施した患者について、療養の一環として行われた食事以外の食事の実費
  • 療養の給付と直接関係ないサービス等の実費一部負担金等の受領

療養担当規則第5条の規定により患者から直接受領できる費用は上記の通りです。そのため、これ以外の費用は原則的に全ての患者から徴収する必要があり、特定の患者(職員や職員の家族など)に対する減免措置を取ることはできません。

第20条 無診察治療の禁止について

医師法第20条には「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない」と規定されています。

また、療養担当規則第20条には「医師である保険医の診療の具体的方針は、前12条の規定によるほか、次に掲げるところによるものとする。 一 診察」とあり、保険による診療報酬請求を行う上で、診察を行う事が当然の前提となっています。

無診察治療の注意点

昨今、訪問治療に関して、訪問看護師からの聴取を元に医師が薬剤の処方をした事が無診療治療に当たるとして取消処分がなされた事例があります。この事例では新規個別指導からいきなり取消処分となりました。

そのため、開業医やこれから開業を目指す先生方は新規個別指導だから取消処分は無いだろうと安心する事なく、開業当初から診療担当規則に沿った診療を心がけるようにしましょう。

第20条 過剰診療の禁止について

療養担当規則第20条には検査や投薬は必要があると認められる場合に行うとされています。診察した上で、個々の患者の病状などから必要があると認められない場合には過剰診療と判断されてしまい、その分の査定が行われますので注意が必要です。

過剰診療の注意点

監査や個別指導で問題になる例としては査定逃れを目的として、保険診療の適用期限が切れている薬剤を別の薬剤名で保険請求するいわゆる「振替請求」があります。

監査や個別指導時に地方厚生局に対して「患者の希望を尊重したと」という言い訳は一切通用しませんので、医師の専門的判断に基づいて治療方針を決定してください。

また、振替請求を行った場合、同日分に行った適切な保険診療請求の全てが査定対象として処理されてしまい、これだけ非常に高額な返還義務が生じるとともに、取消処分に至る可能性が高まりますので絶対に行わないようが良いでしょう。

第20条 健康診断の禁止について

療養担当規則第20条にある通り、保険医は保険を用いて健康診断を目的とする検査等を行ってはなりません。

第22条 診療録(カルテ)について

カルテは医師による診療経過の記録であり、診療報酬請求を行う根拠です。カルテには医師が実際に行った診療事実に基づいて必要事項を適切に記載する必要があり、これに不備があると診療報酬請求の根拠がないと判断されかねません。

そのため、カルテの記載について規定した診療担当規則第22条については確実に理解しておいた方が良いでしょう。

カルテ記載の注意点

監査等で問題になる例としては記載方法の問題があります。急いでいたため、鉛筆書きをしてしまったり、修正ペンで修正したり、カルテの所定様式の枠外に記載してしまうなどです。

また、様式が変更されたにも関わらず、それを知らなかったという事で以前の様式を利用していると記載事項の漏れが生じてしまう事もあります。

実際に販売業者が様式変更に気づかずに以前の様式を販売したためにトラブルが生じる場合もありますので医師の先生自身がカルテ様式の変更が無いか十分注意する必要があります。

第23条 診療報酬明細書(レセプト)の作成について

療養担当規則第23条の2では「保険医はその行った診療に関する情報の提供等について、保険医療機関が行う療養の給付に関する費用の請求が適正なものとなるよう努めなければならない」と定めています。

そのため、診療報酬明細書(レセプト)は請求事務部門が単独で作成するものではなく、医師も作成の一翼を担っていることを十分に認識する必要があります。

誤請求や不適切請求による厚生局からの個別指導・監査などを未然に防ぐためにもレセプト作成を請求事務部門任せにするのではなく、医師自ら点検作業に参加し、レセプト作成に積極的に関わる必要があります。

レセプトの注意点

監査ではレセプトとカルテの突合が行われ、その記載の矛盾を理由として、取り消し処分に進んでいきます。監査においては「スタッフがレセプトを作成したのでカルテと異なる理由はわからない」などという言い訳は一切通用しないため、医師の先生がレセプト内容をしっかり把握しておく必要があります。

混合診療の禁止について

混合診療とは健康保険の範囲内の分は健康保険で賄い、範囲外の分を患者自身が費用を支払うことで費用が混合することは禁止されています。

混合診療は療養担当規則で直接、禁止と規定されているわけではありませんが、平成23年10月25日の最高裁判例では療養担当規則第18条、第19条の存在を根拠として「健康保険法86条の文理から、評価療養の要件に該当しない先進医療に係る混合診療においては保険診療相当部分についても保険給付を行うことはできない」旨の解釈をしています。

禁止されている理由

  • 安全性・有効性等が確認されていない医療が保険診療と併せ実施されてしまうため
  • 保険診療により一定の自己負担額において必要な医療が提供されているにも関わらず、患者に対して保険外の負担を求める事が一般化してしまうため

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このように療養担当者規則を理解することは厚生局からの個別指導や監査を避けるためには大変有効です。個別指導や監査、療養担当者規則などでお悩みでしたら弁護士へお気軽にご相談いただけると幸いです。

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