今回は最近相談が多くなっている適時調査の帯同について記載して行きたいと思います。これまで個別指導や監査への弁護士の介入(帯同)は多く行われてきましたが、適時調査への帯同はあまり行われてきませんでした。
適時調査も時として調査員から高圧的な態度をとられ、十分な対処ができなくなる事もあります。また、適時調査を契機として指定取消まで進んでしまった事例も存在しますので、適切な対応を行うことが大切です。
保険医取消処分解決ナビでは適時調査への帯同も行っております。適時調査対策を行いたい方、初めての適時調査で不安な方などお気軽にご相談頂けると幸いです。
適時調査とは
適時調査とは厚労省による解説によれば「施設基準を届け出ている保険医療機関等について、地方厚生(支)局が当該保険医療機関等に直接赴いて、届け出られている施設基準の充足状況を確認するために行う調査」とされています。
原則年1回とされており、地方厚生局より調査日1ヶ月前に所定の様式で通知が送付されます。重点施設基準が24基準までの場合は保健指導看護師1名、事務官等2名の調査担当者3名以内の体制を標準とし、調査時間は半日程度以内を標準として実施されます。
適時調査の概要
- 実施主体:地方厚生局
- 対象:施設基準の届出を行なった保険医療機関
- 頻度:原則年1回実施
- 指導内容:施設基準届出項目の実施状況(人事管理、業務規定、運用管理など)
施設基準とは
一定の人員要件や設備要件を充足している場合に、地方厚生(支)局長へ所定の届出を行うことにより、診療報酬の算定において通常よりも高い点数が算定可能となるものです。具体的には、看護師の配置を手厚くすることにより算定が認められる入院基本料等、約640種類の施設基準があります。
適時調査の調査項目
適時調査では下記の重点施設基準に該当する項目は念入りに調査が行われるため、常日頃から不備が無いよう施設基準に合った事業運営を心がけることが重要です(重点施設基準の一部を引用)。
適時調査の調査項目の具体例
一般的事項】
1 一般事項
【初・再診料】
2 ※ 医療 DX 推進体制整備加算
3 ※ 看護師等遠隔診療補助加算
【入院基本料】
4 入院基本料【共通(一般病棟入院基本料等)】
【療養病棟入院基本料】
【結核病棟入院基本料】
【精神病棟入院基本料】
【専門病院入院基本料】
【障害者施設等入院基本料】
【入院基本料等加算】
5 総合入院体制加算
6 急性期充実体制加算
7 診療録管理体制加算
8 医師事務作業補助体制加算
9 急性期看護補助体制加算
10 看護職員夜間配置加算
11 特殊疾患入院施設管理加算
12 看護配置加算
13 看護補助加算
14 療養環境加算
15 重症者等療養環境特別加算
16 療養病棟療養環境加算
17 療養病棟療養環境改善加算
18 緩和ケア診療加算
19 ※ 小児緩和ケア診療加算
20 精神科応急入院施設管理加算
21 精神病棟入院時医学管理加算・・・・
引用元:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/dl/chousa_shisetsukijun01-1.pdf
適時調査の統計データ
令和元年〜令和5年度の保険医療機関(医科、歯科、薬局)への適時調査等の実施件数は、次のとおりです。
2020年度と2021年度は適時調査は実施されず、2021年度については実施状況報告書を提出することにより適時調査を実施したとみなす措置が講じられましたが、2022年度からは「令和4年度以降の適時調査の実施について」「令和4年度における指導監査等について」に記載がある通り、適時調査が再開されています。
なお、適時調査は「自己点検結果報告書」が提出されていない病院及び前回の実施年度が古い病院を優先して実施する事とされていますが、情報提供(施設基準に関して不正なことを行なっているような内容のもの)があった病院は実施年度が最近だとしても最優先で実施されます。
診療報酬の返還
適時調査実施要領では、返還金は前回の適時調査時まで遡ることとされています。悪質なケースと確認された場合には、適時調査は中止となり個別指導や監査に移行する事もあります。
自己点検が不十分で施設基準の要件を満たしていないことが確認された場合には、速やかに厚生局に相談して、過請求となっている診療報酬の返還などについて、自発的に対応される事をお勧めします。
保険医療機関の取消事例
先に示したように近年、適時調査は増加しており、適時調査を契機とした取消処分も多くなっています。
長津田厚生総合病院(令和6年事例)
1. 監査に至った経緯:情報提供により個別指導及び適時調査を実施したところ、これまで当該病院が行った一般病棟入院 基本料10対1の施設基準の届出について、実際には施設基準の要件を満たしていないにもかかわら ず虚偽の内容を記載して届出していた疑義が生じ、個別指導及び適時調査を中断した。 当該病院に対して、保存している看護職員の勤務表の提出を指示し、その内容を精査したところ、病棟では勤務していない看護職員が病棟に勤務したとして記載されている月があることが確認された。以上のことから、一般病棟入院基本料10対1の施設基準の虚偽の届出とそれに伴う不正請求を行 っていた疑義が濃厚となったため個別指導を中止し、監査要綱の第3の2に該当するものとして平成 30年6月13日から令和3年12月10日まで計11日間の監査を実施した。
2. 監査結果 ・請求できない一般病棟入院基本料10対1の診療報酬を不正に請求していた。
3. 処分等 令和6年3月1日 保険医療機関の指定取消
引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001388156.pdf
上記の事例では病院の施設基準の届出に関して「適時調査→個別指導→監査→指定取消」といった流れで行政処分が進んでいった事が伺えます。
病院側が提出した書類に矛盾点やつじつまが合わない点があり、それについて厚生局側へ納得できる説明が行われない場合、適時調査・個別指導が中断され監査へ移行してしまいます。
指定取消とならないためにも、まずは届出た施設基準が現実に適合しているか否かを十分確認すると良いでしょう。
また、適時調査など初期の段階で適切な対応を行うことが重要なため、弁護士による帯同を利用するなど、心配な点がありましたら一度、専門家に相談されることをお勧めします。
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