今回は監査の流れや監査後の取消処分の要件について解説していきたいと思います。厚生局からの個別指導の結果、監査に移行した場合、取消処分が行われる可能性が高いです。取消処分後の勝訴率は非常に低くなっており、監査前の段階での適切な対応が重要です。
監査とは
監査とは保険診療の内容や診療報酬の請求について不正や著しい不当が疑われる場合に保険医療機関の指定取消などの行政措置を念頭に実施されます。
実際に監査を担当するのは地方厚生局や都道府県の職員となっており、病院や診療所の診療録、帳簿書類などに対する質問検査権が認められています。
保険医療機関の指定取消とは
保険医療機関の指定取消は医療機関が受ける可能性の高い行政処分の1つです。保険薬局を含めた過去の指定取消数は毎年30〜70件程度となっており、指定取消または指定取消相当となった医療機関は原則として5年間、再指定を受けることができません。
監査の対象となる選定基準
監査対象となる場合
- 診療内容に不正または著しい不当があったことを疑うに足りる理由があるとき。
- 診療報酬の請求に不正または著しい不当があったことを疑うに足りる理由があるとき。
- 度重なる個別指導によっても診療内容または診療報酬の請求に改善が見られないとき。
- 正当な理由がなく個別指導を拒否したとき。
監査の選定基準は大まかに分類すると上記のようになっています。残念ながら監査の対象となった場合、初めに監査前の調査が行われます。
監査前の調査では監査担当者がレセプトによる書面調査を行い、必要に応じて患者などに対する実地調査を行います。
この実地調査は監査担当者が直接患者に対して実施するため、病院や診療所(クリニック)は立ち会うことができません。そのため、実際に適正な調査が実施されていない可能性もあります。
監査の実施通知と弁護士の帯同
患者などへの実施調査の結果、監査の実施が決定した場合、病院や診療所(クリニック)には監査の根拠規定、監査の日時及び場所、出席者、準備すべき書類などを記載した通知が文章で届きます。
監査担当者としては地方厚生局や都道府県の職員が出席します。一方、保険医療機関側からは開設者、管理者の他、必要に応じて保険医、保険薬剤師、看護担当者、事務担当者などの関係者が出席します。
もちろん弁護士に委任している場合、委任を受けた弁護士も監査に帯同することができます。最近では適正な監査が実施されることを担保するために弁護士を帯同させる保険医療機関が多くなっています。
録音は可能か?
監査手続においては手続の内容を録音しておくことが重要です。録音については監査担当者に対し申出を行うことで録音が許可されるのが通常です。
録音により恫喝的な監査が行われることを防止すると共に監査担当者の発言や見解を正確に記録し把握することができるため、これをもとに、後日、書面や口頭で発言や見解の整合性についての説明を求めたり、矛盾点を指摘したりすることができます。
監査後の流れと取消処分の要件
取消処分の要件
- 故意に不正または不当な診療を行なったもの。
- 故意に不正または不当な診療報酬の請求を行なったもの。
- 重大な過失により、不正または不当な診療をしばしば行なったもの。
- 重大な過失により、不正または不当な診療報酬の請求をしばしば行なったもの。
戒告の要件
- 重大な過失により、不正または不当な診療を行なったもの。
- 重大な過失により、不正または不当な診療報酬の請求を行なったもの。
- 軽微な過失により、不正または不当な診療をしばしば行なったもの。
- 軽微な過失により、不正または不当な診療報酬の請求をしばしば行なったもの。
注意の要件
- 軽微な過失により、不正または不当な診療を行なったもの。
- 軽微な過失により、不正または不当な診療報酬の請求を行なったもの。
監査後の行政上の措置としては上記の取消処分、戒告、注意の3種類があります。最も重い措置である取消処分を受けてしまった場合は裁判所に対し、取消処分の取消を求める訴訟を提起することができます。
ただし、訴訟において第一審・控訴審ともに保険医療機関(病院や診療所)が勝訴した事例は溝部訴訟(甲府地方裁判所平成22年3月31日、東京高等裁判所平成23年5月31日)の一件のみとなっています。
そのため、個別指導などの早い段階で専門家に依頼し監査や取消処分に移行しないよう適切な対応を取ることが大切です。
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